ebiten0のブログ

時々書きます。百合が好き。

安達としまむら 『ブーメランについて』

 世界初(かもしれない)女子高生ブーメランノベルで有名な安達としまむら。ついにブーメランまでもがアニメ化されましたね!という事で今回はブーメランについて語って行きたいと思います!あ、申し遅れました。私の名はえびてんと言います。以後よろしーくしくしーく。

f:id:ebiten0:20201114204134j:plain

 

さっそく本編↓

皆様、安達としまむらにおいてのブーメラン。これをただプレゼント交換やブーメラン対決等に出てきただけの安達の宝物と認識してはいませんか?いえ、そう思って当然なのです。しかし、私は安達としまむらを読むたび思っている事があります。それが今回のテーマとなる……『安達としまむらブーメラン、ブーメランに対する気持ち=そのキャラクターの人間関係の状態 説』です!ちょっと待てください。は?って思われた方も帰ろうとせず待って。これから詳しく説明していきますので!

 

どういう事かと言いますと、ブーメランを投げた時の文章からそのキャラクターの心情を読み取るというものです。例えばしまむらしまむらは誰に対してもほどほどに寛容。浅く適度に広く人と関わっていく人間ですよね。そんなしまむらのブーメランの文章を読んでいきましょう。

原作第二巻から少し抜粋↓

『弱く放ってみる。それでもブーメランは前へ、前へと飛んでいき、そしてちゃんとこちらへ戻ってくる。なんの意識もせずに投げてしまったために、戻ってくるそれに膝がすくむ。当たるかもという恐怖から「うひ」と思わず頭を押さえて屈んでしまう。ブーメランはわたしのずっと後ろを通って、公園の端に不時着した。』

 

『今度は意識しながら放り投げた。緩い軌道を描いているのに、思いがけなく遠くまで飛ぶ。そして散歩を終えて回転が途中で切り替わるような錯覚を受ける、その戻り方と風を搔く音に自身の鼓動が重なる。今度は受け止めようと両手を出したら、指先で弾いて落としてしまった。投げるのにも、取るためにも慣れが必要らしい。』

 

『うなく取れなかったのに納得いかなくて、もう一投してみる。さっきよりも更に緩く、空を泳がせるように放ってみた。少し上に向けて投げてしまったブーメランは思いの外、飛んでいかない。早々に戻ってきたそれは、今度は手前で力を失って地面に落下してしまった。投げる角度にコツがいるみたいだ。』

 

『……案外、悪くないかも』

 

これらの文章をみると、しまむらが人と接する時の感覚と似ていると思いませんか?

例えば抜粋した1つ目は、何も意識せず接しようとしても上手く伝わらず、相手からもうまく伝えられずすれ違う形になってしまう。二つ目、少し意識してみると上手くいったかのように錯覚出来る。けれど相手から伝わってくるものを受け止めるのに慣れないし、受け止め方がまだわからない。3つ目、納得できなくて違う形から接してみようとしてもやっぱりまだ上手くいかない。4つ目、こんな感じだけど悪くはない。

安達としまむら一巻とか思い浮かべてみて欲しいです。柵の上で行儀悪く座っていた安達とすれ違ったり、授業受けようと一緒に帰ろうならどっちがいいとか聞いてみたり。相手との距離感を探るような、そんな感覚と似ているように読み取れます。

 

私自身、こうして文字にしようと努力はしていますが中々しまむらに関しては難しく、安達としまむらをよく読んでいる皆様方なら抜粋した文章からここはこうかもしれないと読み取って頂ける事だと思います。

ここまで聞いてもまだまだ納得、というかスッキリしないと思います。次は安達のブーメランを見てみましょう。

第二巻から少し抜粋↓

『青いブーメランが、群青の空へと飛躍する。遥か遠い大気と日差しに溶け込むように一瞬消えるそれを受け止めようとしたら、私の斜め後ろまで飛んでいってしまった。』

 

『投げて飛んで、受け止めて、と分解してしか感じられない。これならしまむらエアホッケーする方がずっと楽しい。私には合わないみたいだ。『いまいち?』『ん……』控えめに肯定した。』

 

『青いブーメランが左右に振り動くのを眺めながら、しまむらが「そう」とどこか満足そうに目を細める。うっすらと口の端が上がって、私は、姉にでも見つめられているようだった。』

 

ここで読み取る点において重要なのが三つ目の『私は、姉にでも見つめられているようだった』という点です。安達はブーメランに対してあまり肯定的ではなく不満気な感じが出ていますよね。その理由として、この第二巻の時点でしまむらが安達に対して『妹』と表現する箇所が多々あるのです。そう、安達はしまむらと他の人とはどこか違う『特別』な関係を求めてはいますが、妹みたいに思われるのは違うと思っているのです。

抜粋した文章はそれを指しているのでないかと思っています。1つ目は自分の思うように受け止めることも出来ない。二つ目は私には現状が合っていないと思う。みたいにしまむらとの現状に不満があるように読み取れます。

 

安達としまむらは互いの距離が掴めきれていないため、このようにかなり違った捉え方をしています。しかし、永藤の場合はどうだったでしょうか?

第二巻から少し抜粋↓

『ブーメランを構える。水平でなく縦に持って、手首に先端を当てるかのように後ろに倒す。そのまま翼を立てて、ぶんと、遠くへ放り投げた。ブーメランがぐんぐんと伸びて、広場の奥まで飛翔する。荒さや尖を感じさせない、風の上を滑っていくような動きだ。宙を泳ぐようにして行けるところまで行き着いたブーメランはいつの間にか水平になっていて、そして忠実に帰還する。』

 

『最初、永藤の手から離れたときは無音に思えて。空から舞い戻ろうとするときに、音が生まれ始める。くん、くん、くんと。ブーメランの羽が空気を掻く音だ。それが次第にこっちへと距離を詰めてくる。綺麗な軌道を描いて。その音に応えるように永藤が屈んだ姿勢で両手を突き出し、白羽取りのような形でブーメランを掴み取る。そして何事もないように膝を伸ばして、ブーメランを撫でた。』

 

『「ちゃんと戻ってくるやつだよ、それ」「普通そうなんじゃない?」「出来が悪いやつも中にはあるから。はいどうぞ」永藤がブーメランを交換してくる。私にはV字型のブーメランが一つ。クリスマスプレゼントを買いに来たはずなのに、なぜ?「最初は本気で投げない方がいいよ。防護用のゴーグルもしてないし」「大丈夫。そこまで大胆じゃないから」』

 

永藤はとてもとても綺麗にブーメランを投げて受け止め、撫でたりして優しく大切そうにしていましたね。安達やしまむらと違ってブーメランに荒さや尖を感じさせず、忠実に帰還し、応えるように受け止め、何事もないように膝を伸ばしてブーメランを撫でる。これ、日野と永藤に置き換えることってできませんか?私には、日野と永藤の完全となった関係性を表しているようにしか思えません。海の凪のように安定した2人の心をブーメランで表しているんじゃないでしょうか。

 

そろそろなるほどなぁ、くらいは思ってきてくれたでしょうか?続いて安達としまむら7巻まですっ飛んじゃいましょう。

 

安達としまむら7巻といえばもう安達としまむらは恋人同士。ラブラブカポォな訳ですよ。そんな2人の初デート!ブーメラン出てきていましたよね…!ま、そこへ行く前に永藤と修業した安達の文章を振り返ってみましょう。

第7巻から抜粋↓

『またなにか言っている。気にせず、力を抜いて投げてみた。手応えが軽く、ブーメランが手を離れていく。そして思った以上に高く上がるのだと、少しばかり驚く。宙を斜めに走るブーメランが公園の散歩を終えるように、途中で軌道を切り替える。こちらへと、その翼を広げた。何で戻ってくるんだろう、不思議だなと、ぽけっーっと眺めてしまう。でも戻ってはきたけど私の立っていた位置から大きく外れている。軌道を目で追って、横に走り、なんとか途中で挟むように掴んだ。手を前に突き出してやや腰の引けた不恰好な取り方だけど、これでいいんだろうか。』

 

『「言うことなし」「え」「雛鳥が巣立ちするのは早いものだ」にっこり、と弟子を見送る笑顔を浮かべる。これは特訓じゃなくて、ただの初心者への指導ではないのか。それも、抜群に短い。「あーでも一つ言っておくと」永藤が爪先で、私の周囲に円を描く。広さは、半径二メートルくらいか。「極力この円の中でブーメランを受け取れるように練習しなさい」「そういうものなの」んむ、と永藤が首肯する。』

 

いやぁ!成長が見て取れますね!!(大声)  1つ目に絞って言えば、これはもう安達がしまむらに伝える感情の大きさと、その不恰好ながらも努力している様子が表現されているとしか思えません。『思った以上に高く上がる』の部分は安達のしまむらに対する気持ちの伝え方で、『ぽけーっと眺めてしまう』の部分はしまむらからの反応を表していて、『不恰好な取り方だけど』の部分が安達の最終的な様子を表している。どうでしょう?そう思えませんか?

 

2つ目に関しては、永藤なりのまだまだ成長出来るという意味が込められているのでしょう。いづれ不恰好じゃなく真っ直ぐ相手の気持ちを落ち着いて受け止められるようになるといいね。みたいな。永藤って抜けてるようで実は察しがいいというか鋭いとこありますしね。永藤師匠が好きになっちゃいますね。

 

では、そんな修業を終えた安達の初デート。お待たせしましたデコちゅーデート。そのブーメランの文章を見てみましょう。

7巻から抜粋↓

『ブーメランが飛翔する。後はあれを、取ればいい。冷静に、確実に。軌跡を目で追って、とそのブーメランと景色がぐんにゃり歪んでくる。緊張の余り視界の左右も狭まり、呼吸の荒さばかりが気になる。しっかりしろ、ここが正念場だ。活を入れて、ブーメランだけを目で捉え続ける。他は見えなくてもいい。隕石が落ちてきても気にしない。赤フィルターを通すように世界が見えていても一切無視する、大事なものだけを見据えるんだ、それが私の生き方だから。ここだ、と動きに合わせて横に駆ける。手を伸ばす。これを取れば、未来が、明日が。なぜか種もみのお爺さんみたいな心境になりながら、腕と銅を伸びきらせる。そして。ぱしんと。座っていたしまむらがキャッチしてしまった。』

 

この7巻においてはもはや、ブーメランに安達の感情を乗せて書いておられ、詳しく説明する必要もないんじゃないかと愚考致します。

 

そして、このあと、p156からの文章。先程説明したクリスマスの時の安達を思い出しながら是非読んでみてください。納得していただけると思います。

 

 

 

 

と、どうでしたでしょうか?安達としまむらを読み返してきたくなったんじゃないでしょうか?そう思えたなら計画どうり。最近はアニメや漫画で安達としまむらをさくさく楽しめちゃうものでしてこういった考察?みたいな自分から行動するということが怠っていたように思います。エンターテイナー側じゃなく消費者側?というか楽しむ側?に入り浸っておりました。まぁそう言いつつ大した事は私には出来ないのですが。今回のようなこうした都合よく捉え過ぎ、解釈しすぎなブログで楽しんで頂けたのなら幸いです。これからも安達としまむらを全力で応援し、楽しんでいきたいと思っています!!

 

おまけ↓

大半の方が忘れているかもしれませんが、実は、しまむらって樽見に対してブーメランの話をした事あるんですよ〜。何巻か覚えてますかな??

とことん安達のライバル感出してきますよねー。というより、しまむらの誰にでも寛容というか浅く広く人と関わる性格ですよ感が強く強調されてますよね。これで樽見もブーメランの練習してたら笑う。10巻も楽しみ。

f:id:ebiten0:20201114204942j:plain

アニメで個人的にめっちゃ気になっちゃったんですが、ブーメランの色、黄緑色でしたよね?原作では黄緑色は永藤が買ったもので、安達にプレゼントしたのは青色でしたよね。こんなこと…こんなこと思いたくないのですが!まさか製作陣側はのんさんのイラストだけを見て「あっ、ブーメランの色は黄緑ね、りょ」みたいな軽い感じで黄緑にしたんじゃないですよね!?まさか永藤と試遊会したやつをそのままプレゼントしたんじゃないですよね!?そうですよね!?試遊会の場面とかアニメじゃなかったですしね!!うん、納得しよう。大丈夫。ダイジョーブ。

f:id:ebiten0:20201114204928j:plain